彼から話を聞いてから、歯並びが気になってしかたありません。
鏡を見るたびに、どんより落ち込んでしまいます。彼から送ってもらった写真を何度も見ているのですが、見れば見るほど気になります。
そういえばわたしは、潜在意識的に劣等感を持っていたのか、写真に写るときはあまり大きな口を開けて笑いません。口を閉じて写るので、こわばった顔になることが多いんですね。でも、何点か撮ったうちのひとつ、オートシャッターに失敗した時か何かで、大笑いしている写真があって。顔が上を向いてるので、よけいにガタガタの歯が下から見えてしまっているんですが、この笑顔がとても楽しそう。シアワセそうに笑っちゃって、まぁ。でも、それが……。
ショックだったのは、歯並びが悪いと育ちが悪い、と判断されてしまう、ということでした。結婚が決まったことをとても喜んでくれている両親の顔が浮かんで、泣きたくなりました。こんなこと、親にとても言えません。わたしの歯並びのせいで、悲しい思いをさせてしまうことになります。
母親に至っては、もしかしたら激怒するかもしれません。たかが歯並びで人間を判断するような家とは結婚しなくていい、なんて言い出すかも。でも、それはそうかもしれない。いまは優しくても、結婚して遠慮がなくなったら、顔を見るたびに歯並びのことを言われるかもしれない。そんなお姑さんとこれから先、ずっとやっていけるのだろうか。だからって、彼との結婚をやめられる?
それは無理。何もやる気が起きず、買ってきたブライダル雑誌をパラパラとめくりました。載っている花嫁の写真は、どれも花のような笑顔です。わたしも、こんな笑顔で笑って写真に写るはずだったのに。
ああ、そうか。歯並びがきれいだから、こんな笑顔になれるんだ。。。ふと、思いました。
歯並びって、今から直せるのかな。明日、歯医者で、矯正のこと聞いてみようかな。